別所隆弘賞受賞 momomaco インタビュー

別所隆弘賞受賞

Momomaco インタビュー

  • #写真

raytrek(レイトレック)は、東京カメラ部のサポートのもと、raytrekアンバサダーの井上浩輝さんと別所隆弘さんの監修モデルのPCを追加発売。それを記念して、「PCの壁紙にしたいレタッチ写真」をテーマとしたフォトコンテストを2021年8月5日〜9月30日に開催し、「raytrekアンバサダー賞」「井上浩輝賞」「別所隆弘賞」を選出しました。「別所隆弘賞」を受賞されたのはMomomacoさん。写真に対する取り組み、受賞作「秋隣」の撮影・レタッチについてなどをお聞きしました。

写真をはじめた時期を教えてください。

APS-Cセンサー搭載のミラーレス一眼を持ちはじめたのが4年ほど前になります。以前はコンデジを使い、仕事で海外を訪れたときなどに撮影していましたが、それは備忘録のようなものだったり、食事、出会った人、訪れた場所などを記録するような個人的な用途でした。写真を撮る、ということを意識したのは、ミラーレス一眼を購入したときからです。なんの拍子で買おうと思い立ったかは覚えていませんが、カメラを手にしてファインダーを覗いたとき、連れて帰ろう、と思ったのは覚えていますね。

レタッチをするようになった時期とその理由は?

APS-Cのミラーレス一眼を使うようになってから独学で写真の勉強をはじめ、夜景を撮るようになったんです。三脚を使い、工場夜景などを撮っていたのですが、他の方の作品を見ると、海の表現などがとても美しくて。そんな表現には編集ソフトが有効だということを知り、Adobe Photoshop Lightroom(以下、Lightroom)や Adobe Photoshop (以下、Photoshop)を使うようになりました。Instagramに写真をアップするようになったのもその頃です。

夜景写真と受賞作の作風は異なりますね。レタッチの考え方も変化していきましたか?

夜景の写真では長秒ノイズの除去などが欠かせない工程ですが、いまはポートレート、猫、スナップを軸にしているので、できる限り撮って出しで完成することを目標にしています。ただし味付けやスパイスのようにLightroomを使う必要はあり、そのときは自然な仕上げをイメージし、彩度を極端に上げるなどということはしないように心掛けています。データを残すために暗めに撮っているので露出を調整し、シャドウを持ち上げたり、周辺減光を加味するなどが基本ですね。被写体ごとに数種類のプリセットは作成してあって、それをまずかけて、そこから必要に応じてレタッチするようにしています。

レタッチに重要性は感じますか?

仕上げには大切ですが、大きくは変えたくないという考え方です。編集ありきで撮るということも一般化していますが、編集前の写真の状態も大切にしたいんです。Lightroomには必ず読み込むものの、カメラの性能がよいため、何もいじらなくていいと思えるとうれしくて、RAWからJPEGに変換するだけのこともあります。いまはSONYのα7シリーズとNikon D850の2台を使い分けていますが、カメラによって撮って出しに向く・向かないもあるかなと思っています。

このフォトコンテストを知ったきっかけは?

Instagramで流れてきました。東京カメラ部さんが主催するコンテストは、フォローをしてタグを付けるだけという仕組みで、とても参加しやすいですね。公開済みの写真であっても、コンテストに合致するようなものがあればタグ付けをします。わたしも含め、周囲の写真仲間たちも、東京カメラ部主催のフォトコンにはよくチャレンジしています。Instagramでの応募ではありませんでしたが、「アサヒカメラ×東京カメラ部 日本の47枚」に応募し、2019年の長崎県代表になったこともあります。

応募作品はどのような観点で選びましたか?

普段は縦位置の写真が多いのですが、壁紙だったら横位置かなと。そしてシンプルなものはないかなと探しました。受賞作は先にInstagramで公開していましたが、アイコンを並べても邪魔になりませんし、これは壁紙に向くと思いまして。わたし自身は猫をパソコンの壁紙にして、ちっともシンプル路線ではありません(笑)。

撮影の時のエピソードを教えてください。

福岡にある古い酒蔵です。9月の2週目だったのですがまだまだ暑い日でした。コロナ禍なのでお酒の提供はできない代わりに、美味しいかき氷が食べられるということを聞きつけて訪れたんです。とても暑く、青空に白い雲も出ていて、瓦が並んでいる様がキレイだなと思い撮った一枚です。「冬隣(ふゆどなり)」という晩秋の季語がありまして、それを文字って、「秋隣(あきどなり)」というタイトルにさせていただきました。実際には存在しない季語ですが、写真を見ると、かき氷が美味しかったこと、秋がすぐそこにきているのに真夏のように暑かったことを思い出します。

撮影時の露出設定など注意した点は?

暗めに撮っています。コントラストがはっきりしていたので暗めに撮り、空のシャドウを上げるか、ということを思い描いていました。写真の下方は真っ暗なのですが、そこは潰すつもりで撮っていて、瓦のハイライトや雲が白飛びしないようにということを気にかけましたね。わたしは背が低いので見上げたときに瓦の裏が見えるんですが、それは切らずに入ったほうがいいと思ったんです。瓦の美しさを際立たせるために、簡素にしたほうがいいなと思って撮ったことは覚えています。

レタッチでこだわった点は?

簡素であるからこそ、水平をしっかりと出すことにはこだわりました。あとは暗い部分、瓦、空の三層の分量ですかね。三層ごとにマスクをかけてレタッチしましたが、空は変な青にならないように、見たままの青になるように微調整しています。

仕上げるのにどれくらいの時間がかかりましたか?

そんなに時間はかかっていないと思います。フォトコン用にレタッチをしようと思っていたわけではなかったので、手前を潰す、瓦の質感、青空は見た目通り、という三つのマスク作業でした。

受賞の連絡が来たときはどんな気分でしたか?

もちろん嬉しかったですし、驚きました。ただ、他にもタグ付けしていたので、連絡をいただいたときには、どの作品が受賞候補になったのかわからず、まったく違う作品が選ばれているだろうなと想像していたんです。候補作品を確認したときに、この瓦の写真かと思い、二度目のびっくり。さらに、別所さんに選んでいただいたことで三度目のびっくり(笑)。この受賞では三回驚きがありました。

別所さんの選評コメントを読んでの感想は?

「自分ではこれは撮れないな」というコメントが、そんなことはないだろうと思いながらもうれしかったです。別所さんのお写真も拝見していますので、お選びいただいたことが嘘みたいだと思いました。どちらかといえばシンプルな写真が好きなので、ミニマムという点を評価していただいたのもうれしかったですね。

フォトコンで受賞するというのは、活動にもよい影響を与えますか?

今回の受賞はInstagramのストーリーで報告しましたが、多くの人からおめでとうと声をかけていただき、とてもありがたかったです。また、自分が参加している・していない、受賞する・しないに関係なく、フォトコンでどんな受賞作がどう評価されているのか、というのを見るのがいい勉強になるし、とても好きです。今回のように受賞したときは、評価されたポイントと自分の好きな部分がマッチすると、本当に嬉しくなります。

受賞作以外の作品も拝見しながら、作品制作についてのお話をお伺いしてきたいです。まずポートレートです。

人を撮ることは好きで、作品制作もおこなっています。これは「プリマベーラ」というタイトルで、福岡の桜の名所で撮りました。手前に菜の花もあって、どちらも春の風物詩でいいなと思ったものの、曇っていて、さらに夕方で、日差しが望めない状況でした。それが逆に幻想的でよかったのかなと思っています。ピンクの華やかな桜ではなく落ち着いた感じですし、モデルさんも白い洋服を着ていて、すべてが控えめな感じ。それが私らしいというか、とても気に入っています。背景にはわずかに夕陽が出ていますが、そこも敢えて目立たないようにレタッチし、ボケと一体となるように表現しています。RAWはもう少しパキッとしていますが、やわらかさを出したかったので明瞭度と彩度を下げ、露出も明るくしすぎないように仕上げています。このくらい仕上げに意図がある場合は撮って出しではできませんね。

肌の補正で使うソフトウェアは?

モデルさんに許可をいただいて、ホクロや歯の色の補正にLuminar AIを使うこともあります。

続いては猫の写真です。

タイトルは「逢魔が時(おうまがとき)」。夕暮れの太陽が沈む時間帯、あの世とこの世が繋がるときのことです。猫は神様の化身ともいわれているので、このようなタイトルを付けてみました。これは沖縄で撮っていて、隣ではおじいが宴会をしているようなシチュエーションでした。猫に『動かないで』とお願いしながら、猫の周囲の光の輪郭を意識して撮っています。トラ柄がかわいかったのですが、輪郭を見せるために猫自体は明るくしすぎないようにしています。また、猫の横顔と防波堤のカーブが気に入っていたので、ローアングルにしすぎず、猫の目線を合わせるというのはかなり意識しました。猫はさまざまな場所で撮っていて、猫を撮るために旅に出ることもあるくらいです。モデルさんと違って指示はできないので、とにかく自分が動くことを考えています。

最後はスナップ写真です。

長崎市内の眼鏡橋です。2月に「長崎ランタンフェスティバル」というお祭りがありまして、街中にたくさんの灯籠が下がります。スマホを構えている観光客の方がとてもいい位置にいらっしゃったので、かなり暗くなりはじめていて手ブレしそうな状況でしたが、手持ちで撮影しました。RAWデータはもっと暗かったと思います。ランタンはもう少し黄色いのですが、色温度を上げて暖かみのある色にしています。これは、個人的にランタンは暖かみのある色というイメージを持っているからです。また、真っ暗な中にランタンが光っているという写真ではなく、暗くなりはじめの時間帯、川面にランタンが写っている様子、そして眼鏡橋の石の様子を見せたいと思い、シャドウは上げて仕上げています。長崎の眼鏡橋は古い石の橋で、その様子が大好きで何度も訪れています。撮って出しを目指してはいるものの、撮った写真を活かしながら自分のイメージに仕上げるというのが写真編集だと思っていて、それがうまくいった一枚だと思います。

撮影した写真データはどのように保管していますか?

パソコンに保存したデータをバックアップソフトで定期的にバックアップをしています。PC内、外付けHDDにもバックアップは取っていますが、SDカードも上書きせずにそのまま保存していくタイプなんです。一度の撮影で、ポートレートでは500枚前後、猫やスナップではもう少し枚数は減ってきますが、それでもSDカードを買い足していくのは大変ですね。

raytrekのPCに対する印象があればお伺いしたいです。

仕事ではWindows機を使用しており、慣れている環境でしっかりと写真編集もできればいいなと思うことも多く、いずれraytrek導入を検討したいと思っています。パネルや額装のために大きなプリント用データも作成することがありますが、そんなときはPCで細かい部分までレタッチして仕上げるので、できるだけ使い慣れたマシンで行いたいですね。

今後の活動の抱負をお願いします。

今回、壁紙にしたい写真コンテストで賞をいただいたことで、自分が気付いていない部分を選者の方に見つけていただけたり、評価していただいたことがとても嬉しかったです。受賞作のように、建物を撮るのもおもしろいなと思ったので、街のスナップに加えて、パターンや建築美などのテーマにも取り組んでみたいですね。自分では「映え」の少ない写真が多いと思っていて、いいねの数で判断せず、撮りたいと思えるものを撮っていいんだな、と改めて思えたことが、今回の受賞のいちばんの収穫かもしれません。

これからも皆さんにMomomacoらしいと思っていただける「物語」のある作品を撮り続けたいと思っています。改めましてこの度は関係者の皆さまに心から感謝申し上げます。どうもありがとうございました。

改めて、受賞おめでとうございました。

※Adobe、PhotoshopならびにLightroomはAdobe Systems Incorporated(アドビシステムズ社)の米国ならびにその他の国における登録商標または商標です。

MomomacoさんPROFILE

普段は九州を中心にモデルさんの持つ素敵な一面を、女性にしか撮れないポートレートやスナップポトレとして撮影。「人」や「猫」を撮ることが大好きで、日本各地の様々な場所を訪れては様々なねこちゃんを撮影する傍ら、「街や人のあたたかみ」を感じるスナップ写真を撮っています。
撮影では「いつもの」「普段の」が持つ素敵な瞬間を、奇を衒わずに素直であたたかい「私らしい」写真にすることを目指しています。

Momomacoさん