フィルムカメラ特有の質感と、透明感のある青さが特徴的なフォトグラファー、葵さん。高校1年生からフィルムカメラで学校生活を撮り始め、SNSを通じてその独特の世界観で支持を集めてきました。

葵さんが初めて写真展に参加したきっかけは、高校のプールで撮影したこちらの写真。以来、高校在学中からフォトグラファーとして活動しています。
葵さんは、フィルムをいつも家電量販店で現像してもらっているそうです。デジタルでの画像編集で自分らしい雰囲気を表現している葵さんに、クリエイターの制作をパワフルに支えるパソコン「raytrek XT(レイトレック・ エックスティー)」を使っていただきました。
葵さんがフォトグラファーの活動を始めたきっかけや、今後の作品テーマについても伺います。
SNSで惹かれた写真をきっかけに、フィルムカメラと出会った
葵さんは、いつから写真を始められたのでしょうか?
初めてカメラを手にしたのは、高校1年生の時です。元々SNSで綺麗なイラストや写真を見ることが好きだったので、X(旧Twitter)で有名なフォトグラファーさんをフォローしていました。とはいえ、当時はカメラに興味がなくて、フィルムカメラの存在すら知りませんでした。
でも、あるときフィルムカメラで撮ったというツイートがタイムラインに流れていて、その写真が強く印象に残ったんです。淡い光の青みがかった写真で、「すっごく好き!」と一気に惹かれました。
それで、フリマアプリを使って中古のNikonのフィルムカメラを探したんです。でもカメラのことを何も知らずに買ったので、届いたカメラの使い方が分からなくて。しばらく放置していました(笑)。
SNSで見かけた写真にそこまで惹かれた理由は、どこにあったのでしょうか。
優しさやあたたかさのある表現と、自分が好きな青い色が両立されていたところです。私は小さい頃から、青が大好きなんです。その写真には、青い世界にやわらかい光の描写がされていて、デジタルでは実現できない世界観が写し出されていました。フィルムカメラの描写に惹かれて写真を撮り始めたので、最初のカメラからずっとフィルムカメラを使っています。

被写体との関係が、自分らしい世界観の表現を助けてくれる
カメラを購入した後は、どのように写真のスキルを磨いていきましたか?
カメラを持つ前から、自分の好きなことに関しては教えてもらうんじゃなくて、自分で学んで身につけたいと思っていて。だからカメラについても、ほとんど独学です。撮り方を調べたり本を読んだりもしていないので、使い始めてから数年後に機能の存在に気づくこともあります。多重露光なんて、意図して撮っていたわけじゃなくて、長らく「たまたま」でした(笑)。
でも好きな写真家さんがいるので、その方の写真と自分の写真を見比べて「こういう写真を撮るには、撮り方をこうやって変えればいいのかな」と研究するんです。それに加えて、自分らしいオリジナルの表現をするにはどんな方法があるのか、日々考えています。そういう試行錯誤が楽しいですね。

葵さんらしさとは、どのようなものだと考えていますか?
自分のアイデンティティーは、大好きな「青」の表現だと考えています。私の写真を見てくれた方には、「透明感」「青春」「被写体の女性に、はかなさと強さを感じる」とよく言われますね。あとは、私は人を撮るので、写真の色や雰囲気だけでなく、被写体との関係性にも自分らしさがあると思っているんです。
というのも、最近、自分の写真におけるテーマをあらためて言語化したときに出てきたキーワードの1つが「肌」でした。肌は、その人の内面に最も近い部分で、人間らしさが表れるパーツだと思います。肌を撮影のために私に見せてもらう行為も、被写体とのコミュニケーションが鍵になるんです。
たしかに葵さんの写真には、被写体の方との関係の近さを感じます。
私は「写真を撮ってほしい」「写真を撮りたい」というビジネスライクな関係だけで、一度お会いして撮影して、それで解散して関係が終わってしまうのは寂しいと感じてしまいます。せっかく写真を通じて出会えたのなら、1回の撮影がお互いにとって楽しい時間になるようにしたいし、仲良くなりたい。そのために、お互いを尊重する関係性を築くことが大切だと思います。
だから撮影では、相手を尊重した上で、相手を知ろうとする気持ちを伝えているんです。その過程で被写体の方と仲良くなることが多くて。初対面で撮影させていただくモデルさんと1回の撮影で終わらずに何度も撮らせてもらったり、家に泊まりに行く友だちになったりします。被写体とフォトグラファーの関係ではなく、“友だち”になって、ときどき一緒に写真をつくるような感覚です。

その瞬間だから撮れた写真で、自分らしい世界観を表現する
被写体の方との関係性も含めた葵さんらしさを表現するために、写真を撮影した後はどのように制作を進めていますか?
フィルムを大手の家電量販店に現像に出して、データをスマホに送っていただいています。そのままスマホを使って、写真加工アプリのLightroomかVSCOを使ってレタッチすることがほとんどです。
レタッチにおけるこだわりは、青の表現です。「私らしい青色はこういう雰囲気」というイメージが自分のなかで固まってきたので、その青色で世界観をつくっています。ただし人がアップで写っている写真だと、青みを強くしすぎたときに顔色が悪く見えてしまうので、青みの強さは写真によって変えていますね。
あとは肌を写した写真が多いので、細かい部分の修正はLightroomで対応しています。それもほとんどスマホで、ときどきノートパソコンを使うこともありますが、最近はパソコンの代わりにiPadを使うことが多いです。
スマホやiPadで制作されているんですね! 制作におけるストレスはありませんか?
データの扱いが難しいなと思います。過去の写真を作品に使うこともあるので、気軽にデータを削除できなくて。結果、パソコンはデータの容量がほとんどいっぱいになり、スマホやiPadの動作も遅くなってしまいました。特に読み込みや書き出しは負荷が大きいみたいで、レタッチ中にアプリごと落ちて、編集中のデータが消えるときもあるんです。

それは切ないですね……。今回初めて画像編集にraytrekを使ってみて、そのようなストレスに変化はあったでしょうか?
はい!重いデータを一気に取り込んだ後もスムーズに動いて、常に動作が速いことに感動しました。例えばトーンカーブを触るとき、マウスの動きにタイムラグが一切なくて、なめらかなんです。負荷のかかる作業をしてもパソコンが熱くならなかったので、びっくりしました。パソコンの動きを待たなくていいから、効率的に作業できてストレスがないですね。
それから、大きいモニターで作業するメリットを実感しました。 机に置いて作業してみたのですが、座ってゆっくり写真と向き合うのもいいなと思います。
普段小さい画面で作業されていると、なおさら違いを感じられそうですね。
そうですね。画面がテレビのように大きくて画質がきれいなので、普段はスマホだと見えないような細かい部分が気になったんです。Lightroom classicの変形ブラシを使いながら、肌をきれいにしたりフィルムの傷の写り込みを消したりしました。
スマホでは修正をあきらめてしまっていた部分も、動作がスムーズなので丁寧に編集できましたね。制作環境が整うことで制作に向き合う気持ちも上がったので、作品としてのクオリティーを上げられたと思います。
raytrekで制作していただいたこちらの写真は、レタッチしてみていかがでしたか?

この写真では顔の周りを明るくしつつ、シャドウに青緑を入れるレタッチをしました。雨が降っているときに撮影したので、湿度のある質感を残しつつ、私が好きな青の世界観を表現しています。
画面が大きいと、細部を編集しながら写真全体として違和感がないか、常にバランスをチェックしながら調整できたので、すごく作業しやすかったです。おかげであまり時間をかけずに自分の世界観を反映できました。
こちらの組写真も、葵さんの世界観が表現されているように感じます。

これは木漏れ日を写していて、「ロモグラフィー」のカメラを使っています。シャッターを1回切ると4枚の写真を連写して、1枚の写真として出力できる機能なんです。実はフィルムが感光していたのですが、感光を活かして、レタッチでは色によって補正を使い分けました。今回raytrekで制作した写真のなかでも特に時間をかけています。
たまたま感光した写真をも、ご自分の世界観に取り入れているんですね。
感光してしまったことによって初めて生まれる表現も、おもしろいなと思っていて。写真って、その瞬間にしか撮れないと思うんです。それなら偶然を楽しみながら、いい作品をつくりたいなと考えています。人を撮るときも同じで、撮る人がその瞬間の私であり、被写体がその瞬間のその方である意味を写したい。そういう写真を撮ることが、私の目標です。
機材詳細
モデル:raytrek XT(レイトレック・エックスティー/デスクトップ/一部カスタマイズ)
OS:Windows 10 Home 64ビット
CPU:Intel Core i7-11700
メモリ:32GB※
グラフィックボード:NVIDIA GeForce GTX1660 SUPER 6GB
ストレージ:512GB NVMe SSD
※メモリ16GB→32GBへカスタム
代表的な構成の一例です。当ページの掲載内容は、在庫等の都合により予告なく変更、または終了となる場合があります。
葵さんPROFILE
2001年生まれ。高校1年からフィルムカメラで学校生活を撮り始め、X(旧Twitter)やInstagramでその写真を発信するようになる。プールで撮影された青の写真がX(旧Twitter)で話題になり、2019年の夏に米原康正が企画したグループ展“YONE‘S ART PARTY”に参加し、その後PLANTICA、WEGO、カルビーサッポロポテト「シンコセイ」、BEN DAVISなど広告やPVなど活躍の場を広げる、これからが期待される21世紀生まれの写真家。
